ueda nobutaka blog

夜稿百話  ブログ全リスト

第35話 ドナルド・キーン『文楽』part1 浄瑠璃と山葵は泣きながら誉める

ドナルド・キーン『能・文楽・歌舞伎』  だめだ。目の辺りがうるうるしてきた。涙が瞼の堤防を越えそうだ。あっ~っ、袂(たもと)に河原の石を詰めはじめた。身投げする気だ。しかし、両隣に坐っているおばさんたちは、いっこうに動ずる気配がない。ひょっ...
夜稿百話  ブログ全リスト

第34話 『ヴィスワヴァ・シンボルスカ詩集』私を通り過ぎるものの暗号解読

ヴィスワヴァ・シンボルスカ『シンボルスカ詩集』  他の惑星からやってきたホームラン王がいて、タケコプターに爆弾結んで飛ばしあってる ? この奇妙な惑星では入場券の他に退場券もいるのか。調査に来るなら缶コーヒーあげる‥‥‥ 「世界詩のグレタ・...
夜稿百話  ブログ全リスト

第33話 小泉八雲『日本瞥見記』part2 彼が見たものは幻想の日本だったのか

小泉八雲『日本瞥見記 下』“Glimpses of Unfamiliar Japan” 平井呈一 訳  「‥‥力強い山頂が、いま明けなんとする日の光の赤らみの中で、まるで不思議な夢幻の蓮の花の蕾のように、紅に染まっているのが見えた。その光景...
夜稿百話  ブログ全リスト

第33話 小泉八雲『日本瞥見記』part1 魔法にかけられた喜びの国へ

小泉八雲『日本瞥見記 上』“Glimpses of Unfamiliar Japan” 平井呈一 訳  「来日後、数年の間、彼の日本熱は異常なほど昂進した。ハーンは神々の国を発見し、彼の『知られぬ日本の面影(日本瞥見記)』は日本を手放しで絶...
夜稿百話  ブログ全リスト

第32話 ジョセフ・コンラッド『闇の奥』見世物を描く還元不能な二重性

ジョセフ・コンラッド『闇の奥』  テムズ河の河口付近、グレイブゼンドのあたりは暗く濁り、その向こうには哀調を帯びた薄暗闇に覆われた偉大な都市ロンドンが沈殿したかのように横たわっていた。主人公チャーリー・マーロウは、船の舳先に立って海を見つめ...
夜稿百話  ブログ全リスト

第31話 カマル・アブドゥッラ『欠落ある写本』交響する伝承と創作 

カマル・アブドゥッラ『欠落ある写本』 2017年刊  用事があって市内まで出たので、久しぶりに図書館に踏み込んでみる。やっぱり、ネットで探すより本物がいい。不思議の国のアリスかひみつのあっ子ちゃんの気分だ。何か清楚なのに魅惑的なオーラを放つ...
夜稿百話  ブログ全リスト

第30話 ラフィク・シャミ『ぼくはただ、物語を書きたかった。』母語で書けなかった作家の話

ラフィク・シャミ『ぼくはただ、物語を書きたかった。』  1971年、ラフィク・シャミは極寒のフランクフルト空港に着いた。彼は後ろを振り返る。そこには、言葉にならない喪失感があった。故郷を失ったのだという実感が、これほど痛切とは思わなかった。...