ueda nobutaka blog

夜稿百話  ブログ全リスト

第39話 原田安啓『中世イスラムの図書館と西洋』知はブーメランのように帰還する

原田安啓『中世イスラムの図書館と西洋』  中世イスラム世界、それも図書館について書かれている。う~ん、なんてレアなんだろう。史上最も有名な図書館は、アレクサンドリアの図書館といってよいと思うけれど、これに匹敵する図書館がイスラムに登場する。...
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第38話 ジャラール・ルーミー『ルーミー語録』「消滅」から湧き出る言の葉の神韻

ジャラール・ルーミー『ルーミー語録』 井筒俊彦 訳井筒俊彦 著『ルーミー語録解説』 聞け 嫋々 (じょうじょう) たるこの葦笛の語る言葉を葦笛はしめやかに別れの愁いを語る「根を切られ、故郷の川辺に分れを告げてきて以来、啜り泣く私の音色に、そ...
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第37話 エリアス・カネッティ『眩暈』「私の神話」を巡る闘争の乱反射

エリアス・カネッティ『眩暈』  主人公キーンは、孔子をおまえ呼ばわりしながら心の対話を繰り返す。孔子は眉一つ動かすことなく、こう答えた。「十五にして学び、三十にして立ち、四十にして惑わず――六十にしてようやく耳を得たり」と。キーンは思い出す...
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第36話 平川祐弘 『アーサー・ウェイリー 源氏物語の翻訳者』part2 紫式部の手管

『源氏物語 第二巻』 アーサー・ウェイリー 訳  ウェイリーは、『枕草子』を四分の一訳して1928年に出版したが、第二次大戦後は、中国の詩の翻訳へと傾斜していった。1949年には白居易の伝記『白楽天』を、1950年に『李白』を出版。晩年には...
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第36話 平川祐弘 『アーサー・ウェイリー 源氏物語の翻訳者』part1 極東からの文学的波涛

平川祐弘 『アーサー・ウェイリー』源氏物語の翻訳者  「日本の傑作‥‥驚嘆すべき美しさ‥‥この中に忘れ去られた一文明がありありと蘇る‥‥その完成度を凌駕するのはただ西洋の作家の中でも最大の作家のみであろう‥‥」と「タイムズ」の文芸付録は書評...
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第35話 ドナルド・キーン『文楽』part2 文楽人形の道行

『能・文楽・歌舞伎』 ドナルド・キーン  確かに人形が生きていると錯覚させるほどの芸がある。それは多くの人たちが体験してきたことだ。その人形に生命を吹き込んできたのは人形遣いたちである。彼らは、ある時代には河原者と同一視され賤民と呼ばれ、時...
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第35話 ドナルド・キーン『文楽』part1 浄瑠璃と山葵は泣きながら誉める

ドナルド・キーン『能・文楽・歌舞伎』  だめだ。目の辺りがうるうるしてきた。涙が瞼の堤防を越えそうだ。あっ~っ、袂(たもと)に河原の石を詰めはじめた。身投げする気だ。しかし、両隣に坐っているおばさんたちは、いっこうに動ずる気配がない。ひょっ...